「記録残業」があるあるの介護業界
「人と接するのが好きで介護の仕事をはじめました!」とフレッシュに語る介護職は多いですが、
(そのうちフレッシュさを失うけど)
この仕事は利用者さんだけでなく、書類とも接しなくてはいけません。
バイタル表に業務日誌、入浴チェックに服薬確認表、そして利用者さんご家族との連絡ノート…
こんな感じで、たくさんの紙に囲まれて苦労している介護職も多いのではないでしょうか。
え、そんな紙媒体多いの?
ペーパーレス化の進みは会社によりけりだし、
事業所間のやり取りにFAXが現役、なんて珍しくないよ。
なかでも「介護記録」は、重要度も高いうえに書き方がイマイチわからなくて苦手!という人が多いと思います。
「記録書きに追われて利用者さんの対応が疎かに…」
「利用者さんを寝かせ終えて就業時間、そして記録書きで残業残業…」
こんな事にならないためにも、「記録をシンプルかつ簡単に書く方法」を今回は紹介したいと思います!
やっぱり大事な介護記録
「記録は大事!ちゃんと書いて!」と管理者やら主任から口すっぱく言われた経験のある人もいると思いますが、ここで介護記録の意義についておさらいしておきましょう。
介護記録とは、「介護サービスとして実施した内容や利用者さんの様子、健康状態などを記したもの」です。
何ゆえそんなものが必要かというと…
「作れと言われているから」です!
…それだけだと身も蓋もないですね。
確かに、介護保険法で作成・保存が義務づけられているのですが、それ以外にもきちんと存在意義があります。
・サービス提供や利用者の情報を保管
どんなに良い介護をしていても、何らかの形で保存しなければ人に伝えることはできません。
後から誰が読んでも、どのようなサービスを実施したのかが分かるようにすることは重要です。
職員間の情報共有
一人の利用者さんを複数の介護職でケアするのが、介護の仕事の基本スタイル。
自分が普段出勤しない時間帯のことなどは、口頭の申し送りだけでは不十分なことも多いです。
介護事故や苦情に対する証拠
介護事故では、「安全配慮」がなされていたかが争点になる場合が多いです。
その上で、「危険を回避するために十分な措置を講じていた」ことが記録上残っていれば、施設や介護職にとって訴訟リスクを下げることに繋がります。
介護報酬を得るための証拠
介護施設は、介護保険制度のもとに事業を実施しています。
そのため、報酬を得るためには「きちんとルールに則ってサービスを実施している」ことを示す必要があります。
記録が大事なのは改めてわかった!
でも文章書くの苦手だし、何書けばいいのかわかんないんだよ!
ということで、次項ではいよいよカンタン記録術を紹介します!
[フォーカスチャーティング]
今回紹介する記録の書き方は、[フォーカスチャーティング]です。
別に名前は覚えなくていいです。
言葉の意味的に噛み砕くと…
focus=焦点をしぼる
chart=書き記す
ということで、「焦点をしぼって記録を書く」というもののようですね。
では、何に焦点を絞るのか?
これが後々重要になってくるんですが、まずは大まかなフローを見てみましょう。
フォーカスチャーティングでは、
F(出来事)→D(状況)→A(行動)→R(結果)
という順番で、簡潔に文章を書いていきます。
具体例も見てみましょう。
この場合、
F(出来事)=「△△時すぎ、〇〇さんを入浴に誘った」というケア内容に設定しました。
↓
その時の(少し)詳しい状況として、
D(状況)=「昨日も入ったから、いいよ!と断られてしまった。」と拒否されたことを書きます。
↓
このままだと良くないので職員さんは対応します。
A(行動)=「一緒に入って背中を流してくださいよ〜と誘った。」
↓
その結果、
R(結果)=「仕方ないなと笑って入浴された。」
良かったね。
という一連のストーリーで、利用者さんの様子から職員の実施したケアの内容まで簡潔に書くことができました。
要は、
「利用者さんの様子に対して、自分がどんなケアをして、その反応がどんなだったか」
という順番で書けば良い、という事になります。
書く要素と順番はわかったけど、最初のF(出来事)は何に設定すればいいのさ?
そう、この項のはじめにも言ったとおり、
フォーカスチャーティングとは「焦点をしぼって記録を書く」方法。
焦点のあて先=F(出来事)を何に設定するかが一番のキモとなるのです。
というわけで、次項ではF(出来事)の探し方を解説します。
記録のヒントはケアプランから探そう
キモとなるF(出来事)を何に設定するか、ですが。
基本的には「自分がその時間帯で一番気になったこと/重要だったこと」で良いと思います。
何から何まで書いていたら、それこそ記録書きがいつまで経っても終わらなくなってしまいますからね。
同じ時間帯でも、他の職員とは違った視点で違った場面をチョイスすることも、「職員間の情報共有」には有意義に働くでしょう。
その上で、
何を書いたらいいか、サッパリわからない!
そんな時は、ケアプランに目を通してみましょう!
おさらい〜ケアプランとは〜
ケアプラン(介護サービス計画書)には、
・利用者さんのニーズや心身機能の状態、自立に向けた課題など
・それを踏まえた短期/長期目標
が書かれています。
つまり、
ケアプランを達成するためのケア(介護サービス)が介護職の仕事内容であり、
そのために実施した内容を介護記録に書けば良い
ということです。
事例を挙げてみましょう。
ケアプランの短期目標に、「介助なしで食事を完食できる」と書かれているので、食事中の様子をF(出来事)に設定してみましょう。
さらに、文章から「介助なしで」「安全に」「完食」というワードに分割できますので、
・どのような介助を必要としたか/必要としなかったか
・急いでいる様子はなかったか
・一度に口に運ぶ量は多すぎなかったか
・職員の声掛けに対する反応はどうだったか…etc
などなど、注意すべき点がいくつか洗い出せます。
これらをD(状況)に設定すれば、その後のA(行動)やR(結果)も自ずと書けるはず。
ということです。
記録書きだけでなく、実際のケアの最中にも色々なことに気を配れるようになるので一石二鳥ですね。
「迷ったらケアプラン」ってことね〜
おわりに〜介護職には時間がない〜
ペーパーレスもICTの導入も、なんだか遅れている印象の介護業界。
介護記録が手書きの施設も多いでしょうし、しばらくはその状況も変わらないでしょう。
(手書きじゃないとムリ!という人も少なくないですし)
今回は、「記録書きをできるだけ少なく、実際のケアをできるだけ多く」というスローガンのもと、
[フォーカスチャーティング]という方法を紹介しました。
フォーカスチャーティングなんて名前は知らなくても、こんなやり方どこかで聞いたことあるよ?
という人も少なくないかもしれませんね。
少しでもお役に立てたら幸いです。
記録は最小限に、ケアは最大限に!
いいこと言ってやった感出てるぞ。
では。
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