はじめに
みなさんは「2025年問題」という言葉をご存知でしょうか?
いわゆる団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)に達し、全人口の30.3パーセントが高齢者になる
という予測が立てられています。
医療や社会保障費の増大と並んで危惧されているのが、介護への影響です。
2025年には、高齢者のうち5人に1人が認知症患者になると言われています。
ますます身近な存在になる一方で、「認知症って…実際よく分からないな」と感じている方も
少なくないのではないでしょうか。
今回は、話題の書籍「マンガでわかる! 認知症の人が見ている世界 」を要約する中で、
認知症にまつわる困りごとについて解説してみようと思います!

認知症の困りごとの原因は、認識の「ズレ」?
認知症にまつわる困りごとといえば、徘徊、暴言、もの盗られ妄想などが挙げられます。
認知症の人がこうした言動をしてしまう原因として、本書では
『認知症の人の目に映る世界と、認知症でない私たちが見ている世界には、少しのズレがある』
からであると説明されています。
まずは、この「ズレ」について理解していきましょう。
老人ホームなどの介護施設では、夕方になると急にそわそわしたり、「家に帰りたい」と訴える利用者さん
が少なくありません。
帰る理由を尋ねると、
「子供の世話をしなければ」とか「ご飯の支度をしなきゃ」
などの言葉が聞かれるのです。
初めてそんな場面に出くわしたら「!??」となってしまいそうですが、
利用者さんたちは、職員にウソをついて帰ろうとしているわけではないのです。
認知症の人に歳を尋ねると、30代とか40代とか、実際より若い年齢を答えるケースがよくあります。
これは、認知症の症状のひとつである「見当識障害」によって、時間や場所などが正しく把握できないことから
起こるものです。
女性の場合、子育てや家事に一生懸命だった頃の記憶が根強く残ることは多いです。
夕方という時間帯が当時の記憶を刺激した結果、職員との間に「ズレ」を生じさせてしまったんですね。

そういう時、どう対応するの?



「お送りします」って散歩しながらお話を聴いたりとか、
不安を解消する方向で考えるよ。
「ズレ」を形作るのは、その人の個性
前項の例では、「見当識障害」という認知症の症状がきっかけになって「ズレ」が生じてしまう、
という流れでした。
しかし、夕方にそわそわし始める理由は人によって、家事や子供、あるいは仕事などさまざまでしょう。
(どの年齢にタイムスリップするか、にもよるでしょうね)
「ズレ」は、心理状態や生活歴、本人の性格などによって形作られる複雑なものなのです。
書籍の中から、生活歴が生み出した「ズレ」と、その解決のアイデアを見て見ましょう。
深夜に老人ホームの廊下を徘徊し、他の入居者さんの居室に入ってしまうお婆さん。
→「どうしました?」と声をかけても、怪訝な顔をしてなかなか自室に戻ってくれない。
徘徊という行動にも、心理面や環境面、生理面など理由があるのですが、
このケースでは、家族へ生活歴を尋ねたことがきっかけで理由がわかってきます。
お婆さんが、もともと看護師の仕事をしていたことがわかる。
→夜になると当時の記憶が蘇って、看護師として巡回しているんじゃないか、と推測する。
「生活歴」とは、「どこで生まれて、どんな生活をしてきて、どんなことが好きで…」
といったような、その人の歴史と呼べるようなものです。
その人の個性を起点にすることで、症状や行動の理解、ひいては対応の糸口にすることができるのです。



本人とのお喋りや家族との何気ない会話、ケアマネからの情報提供など、ヒントは至る所にあります。
不安への寄り添い→安心へ
ここからは、対応の組み立て方を考えていきましょう。
本書において、認知症対応のキモは「安心してもらうこと」、逆に言えば「不安を取り除いてあげること」
とされています。
認知症の人は、ただでさえ不安と隣り合わせな状態にあります。
「今がいつなのか」「ここはどこなのか」「目の前の人は誰なのか」
これらが分からなくなってしまいがちなのです。
その上、自分の言動が理解されなかったり、否定されてしまったら哀しいですよね。
それが継続されると…
分からないという「不安」→他人に理解されない「不満」→周囲への「不信」→暴言などの「不穏」
という、負のループが出来上がってしまいます。
こうなっては、介護する人も大変!
認識の「ズレ」を把握した上で、「安心してもらえるような言葉や行動」で対応するのが重要、
というわけですね。
前述の、元看護師のお婆さんのケースでは、どのように解決したのでしょうか。
「今は看護師時代に戻っていて、責任感から見回りをしてくれている」と理解して、
「今日の巡回は私が担当しますので、お休みになってください」と声をかける。
という対応でうまくいったようです。



ちゃんと看護師っぽく話さないとバレたりして笑



「介護士は役者であれ」って、よく言われるよ!
きちんと、その人の世界の住人になって悩みに向き合うのが大事だと思います!
終わりに・本書のオススメポイント
最後に、この本の良かったところを紹介します!
具体的なエピソードで、アイデアを蓄えられる
本書には「こんなこともあるんだなあ」「あるよね!こういうこと」「こうすれば良かったのかぁ」
が沢山紹介されています。
在宅介護経験のある人や、介護の仕事をしている人で「あるある」と感じない人はいないんじゃないでしょうか。
先にも述べた通り、認知症の困りごとは、特有の症状に加えて本人の性格や心理状態などが
複雑に組み合わさって現れます。
それゆえ、同じ人に同じ対応をしてもうまくいかない場合も、よくあるのです。
(逆も、また然り)
対応に行き詰まった時は、アイデアや引き出しの多さがモノをいいます。
「まだこの手がある」とか、「そうきたら、こうだ!」みたいに、常に余裕を持つためには
ケーススタディが非常に重要なのではないでしょうか。
マンガならではの、心の動きが描写されている
認知症を理解するためには、病理だけでなく本人の感情に寄り添う必要があります。
とはいえ、文字だけの本で得た情報を実際の対応に活かすのは、なかなか難しいものです。
本書はタイトル通り、マンガ多めで構成されています。
マンガといえば、物語が進む中での登場人物の感情の変化も、魅力の一つですよね。
認知症の人が、どういった世界の中で何を感じているのか。
それを理解することができれば、あとは心配事を解消する手助けをするだけです。
そういう意味では、文字だけの本よりも悩み事の真相に辿り着くヒントが
とてもわかりやすい形で書かれていると思います。
おわりに
というわけで、今回は「マンガでわかる! 認知症の人が見ている世界 」という書籍を紹介しました。
とても読みやすいので、現在介護や認知症に関わっていない人にも読んでいただきたいと思いました。



僕も、こんなコンテンツを作れるよう頑張ろうと思います!


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