介護職の落とし穴
介護職が一番やってはいけないこと。
それは「虐待・身体拘束」です。
具体的にどんなことが該当するのか?過去どんなことが行われてしまっていたのか?
そういった情報は、施設内の研修や先輩職員などから耳タコなほど聞かされると思います。
では、「不適切ケア」はどうでしょう?
あんがい初耳の方も少なくないのではないでしょうか。
今回は、そんな「不適切ケア」を解説することで少しでも介護業界を明るくできれば…
とか考えております。
今回は、下記のアンケートから引用させていただきました。
身体拘束及び高齢者虐待の未然防止に向けた介護相談員の活用に関する調査研究事業報告書https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/52_tiikikea.pdf
とても興味深いので、ぜひご覧になってみてください♪
でははじめましょう!
不適切ケアって?虐待・身体拘束との違い
まずは「不適切ケア」の定義から確認してみましょう。
介護職のやっちゃいけないことは、このようなピラミッド構造になっています。
「虐待・身体拘束」=誰が、いつ、どこでみても利用者さんの尊厳や自由を踏みにじっているやつ
「グレーゾーン」 =即時に判断しずらいが、少し考えたら尊厳と自由踏みにじっているやつ
「不適切ケア」 =虐待とまではいかないが、倫理的に正しいとは言えないやつ
という感じでしょうか。
ピラミッドの下層にいくにつれて、
・数が増える
・可視化しづらくなる
のが特徴と言えるかもしれません。
「車椅子の空気を抜く」ってなに?
タイヤの空気をわざと抜いて、利用者さんが自走できなくする
そうです…。
筆者はコレ聞いたこともなかったので、割とショックでした。
(ちなみに「グレーゾーン」ではメジャーなものだそうな…)
虐待じゃないなら、別に良くない?に対する反証
この手の話になると、
「不適切とは言うけどさ、そこまでおイタしてないし別に良くね?」
「そのくらい、誰でもやってるわよ!」
「利用者はイヤとは言ってないし!」
みたいな意見がもしかしたら出るかもしれないので、それぞれの代表的な例を列挙してみましょう!
なんかちょっと楽しんでない?
「虐待・身体拘束」に近づくほど、行動が具体的かつ過激になっているのがわかります。
対して、「不適切ケア」は言葉によるものが多くを占めています。
一見すると三者は独立したものように見えますが…
「乱暴な言葉」や「見下した言葉」が過激になれば明確な暴言(言葉の暴力)になりえますし、
「利用者の行動を制限する言葉」は、身体拘束という形で実力行使されるかもしれません。
「利用者の尊厳を損なう=人として扱っていない」という根っこは共通して有している、
と解釈することができそうです。
(あくまで行動が、という話で、その介護職の人間性までは判断できないですけど。)
「利用者がつけあがるでしょう!」は、
聞き取りしていた相談員さんが言われた言葉だそうです。
原因と対策
「不適切ケア」を放っておくと「虐待・身体拘束」にエスカレートしてしまう危険性がある、という点を踏まえて、原因と対策を考えてみましょう。
①倫理観の低下
介護現場では、「ちゃんとやらないといけないのはわかってるんだけど…」といった声がしばしば聞かれます。
丁寧に接しなければいけないのに、ついついキツめの声かけをしてしまう。
忙しさにかまけて、利用者さんの変化に気づいてないフリをしてしまう。
などなど。
この場合、「不適切ケア」が不適切であることを理解していますから、気持ちがピリッとする工夫が必要かと思います。
対策:神棚を置く
「ウチの施設、無宗教なんだけど…」みたいな話ではないので大丈夫です笑
『施設長や管理者など、規律に厳しめの人が不定期で現場に滞在する』といった具合で、
「みられている」意識を高めるというものです。
とはいえ施設長もヒマではないでしょうから(たぶん)、現場の片隅で事務を行なうなどでも十分なのではないかと思います。
僕の職場だと、ケアマネが利用者さんと一緒に昼食を摂るようにしていた時期は、不適切ケアが少なかったです。
忙しい時間帯ほど効果があるかもしれませんね。
神棚役の人がルールにゆるかったら意味ないけどね笑
②知識不足
一言で「不適切ケア」といっても、シチュエーションは多岐にわたるし状況次第なものも少なくないです。
送迎時に気が進まない利用者さんを口説く文句として、
『〇〇さんが来てくれないと困ります。』
みたいな声かけは非常にポピュラーです。
これ、無表情でぶっきらぼうに言っていたら怖いですよね笑
本人との関係性や性格、介護職の表情や声色などによっては「心理的負担を強いている」という理由で
「不適切ケア」に該当しそうです。
対策:まずは「不適切ケア」について知る→声かけや対応のボキャブラリーを増やす
何が「不適切ケア」に該当するのか、知識として知るのは第一歩かと思います。
その上で、ちょっとした言葉の言い換えや、少しの工夫で「不適切ケア」は「適切ケア」に変換できると思います。
上記の例で言えば…
優しい表情や言葉で話しかけるのはもちろん、
『〇〇さんが来てくださったら嬉しいです』
など、少しでもプレッシャーにならないような言葉を使うこともできます。
字面だけだと、正直あんまり変わんないですね笑
ストレス
忙しい、事故の危険がある、対応に困って、どうしたら良いかわからない…
このようなシチュエーションでは「不適切ケア」が増える傾向にあります。
「それは言い訳だ!」と言われればそれまでなのですが…。
①と②を介護職個人が気をつけていても、過度な業務負担やチームワークの悪さが「不適切ケア」を生む温床になるケースも、少なくないのではないでしょうか。
対策:業務内容の見直し、チームワークの改善
過度に業務負担が多い時間帯はないか、チームの人間関係が「見て見ぬふり」を生んでいないか。
こういった問題を改善するには、介護職個人だけの力では無理がありますよね。
この項目に関しては管理職が主導して行なう感じだね。
もちろん個人がチームやリーダーを支えることも大事です!
まずは知ることから始めよう
今回は「不適切ケア」について解説してきました。
シチュエーションや利用者さんとの関係性によっては「不適切」と言い切れないものも存在するのが、
この問題の難しい点と言えるのかもしれません。
そもそも悪いことと知らない人を頭ごなしに注意するのもよろしくはなさそうですし。
モラルの緩い現場で、1人が「それは不適切だ!」と頑張っても、ゆくゆくつぶれてしまうでしょう。
今回引用したアンケートには、様々な「不適切ケア」が紹介されています。
それらに目を通すだけでなく、
「どこが不適切なのか?」「場合によっては悪くないんじゃ?」
など、介護職個人やチームが考えることで「適切ケア」が増えていくといいなと思います。
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