散歩は健康に良い?
「散歩は健康に良い」という話を耳にする機会は多いですね。
お金はかからないし、特別な技術が必要なわけでもない。
一番身近な健康法と言っても過言ではなさそう。
具体的には何に効くの?
散歩のメリットというと一般的には、
・有酸素運動で脳を活性化
・適度な負荷の運動で筋肉量を維持/代謝アップ
・日光を浴びて体内時計をリセット
などが挙げられるでしょう。
これらに加えて、
今回は「認知症の予防とケアにも散歩は効く」という話を、
脳科学の知識を使って解説してみたいと思います。
キーワードは「デフォルトモード・ネットワーク」!
まずは、この耳慣れない言葉から紐解いてみましょう。
ひらめきを呼ぶ!デフォルトモード・ネットワーク
「デフォルトモード・ネットワーク」とは、
「身体がリラックスしている時に働く脳内ネットワーク」のことです。
車で例えると、「アイドリング中」みたいなイメージ。
身体の動きは停止しているけど、脳は動いている。
むしろ、その時にしか活発にならない脳の働きがあるんです。
この「デフォルトモード・ネットワーク」では、言葉、記憶、感情、そして種々な外的刺激といった情報が処理されます。
営業が終了したデイサービスで、「今日はこんな事があった」、
「〇〇さんはこんな様子だった」とか振り返っている感じかな?
脳内反省会って言い換えてもいいかも。
この「デフォルトモード・ネットワーク」の働きが盛んになると、
・情報が整理され、頭がスッキリ!
・情報や記憶を結びつけやすい環境に
・創造性が高まり、良いアイデアが出やすくなる
といった効果が望めます。
「リラックスがナイスアイデアを産む。」
というと、こんな出来事がむか〜しありました。
古代ギリシャの人物、アルキメデスは数学者であり物理学者であり天文学者であり発明家でもある…。
そんな天才チックなお人(「アルキメデスの原理」が有名)。
彼がお風呂に使っていると(古代ギリシャ人は風呂好き)、ずっと頭を悩ませていた問題の答えが不意に浮かびました!
「エウレカ(わかった)!!」
そう叫んで風呂を飛び出すと、嬉しさのあまり生まれたままの姿で街中を走り回った…。
みなさんの中にも、
「トイレの中で考え事をするとはかどる」
「早朝まどろんでいたら良いことを思いついた」
などなど、リラックスしている時に創造性が高まる体験をした人もいるのではないでしょうか?
「デフォルトモード・ネットワーク」をうまく活用すれば、
発想力豊かなアイデアマン(アイデアパーソン?)として活躍できるかも…
僕らにとっての「デフォルトモード・ネットワーク」の旨味はわかったけどさ。
認知症ケアにはどう関わってくるの?
「記憶や情報の整理」がポイントになってきます。
次項で見ていきましょう!
座っている=リラックスとは限らない?
「デフォルトモード・ネットワークにはリラックスが必要」、という話をしました。
「リラックス」がどういう状態を指すのかを理解するために、次のイラストを見てみましょう。
認知症の方がソファに座ってじっとしているのですが、注意して様子を見るとなんだか不安な表情を浮かべています。
介護施設でしばしばみられる光景かと思います。
認知症になると、記憶や情報の整理が苦手になってしまい
・目的遂行力の低下
・自身の喪失
・人との関わりを避ける
などなど…、さまざまな不安で頭がいっぱいになってしまう事があります。
じっとしている=リラックスとは限らない!
というポイントを踏まえて、
積極的にリラックスする方法を、再び歴史上のエラい人から教えてもらいましょう 笑
散歩とトイレと枕はリラックスの母
むか〜しむかしの中国に、欧陽脩という、美しい文章を書くことで有名な人がいました。
「良い文章を書くには、どうしたら良いですか?」
という疑問に彼は、
『三上』で行うと吉と答えました。
『三上』とは、
・枕上(寝っころがってまどろんでるとき)
・馬上(移動中)
・厠上(トイレ中)
馬が移動手段の人は、令和の日本にほとんど存在しないかと思われますが…。
今回はコチラの「馬上」を「散歩」と変換してお話します。
重要なのは、「頭を使わない単純な動作」かつ「リズミカルに体を動かす」という点。
「歩く」という動作自体を、いちいち細かく考えながら行う人はいませんよね。
むしろ、「左手を前方に動かすと同時に右足を股関節から動かして…」なんて考えていたら
ロボットのような変な歩き方になってしまうでしょう。
(ロボットに失礼ですね、ごめん)
無意識でも行える動作をすることで、積極的にリラックス状態を作り出し、
結果デフォルトモード・ネットワークを活発化させよう
という作戦です。
「考えずにできる慣れた動作」っていう条件なら、散歩以外にも考えられそう。
女性なら洗濯物たたみや洗い物だとか、頭を使わない単純作業なら効果が望めそうだね。
散歩をしていると、さまざまな風景や匂いに出会います。
それらに出会ったとき、
「そういえば、私もむかし犬を飼ってたなぁ」
「この匂いはなんとなく小さかった頃を思い出すなぁ」
など、適度な刺激で昔の記憶が呼び起こされる(記憶の整理)ことがあるかもしれません。
また、自信を失ってしまいがちな認知症の方にとっても、
散歩の「行って、帰る」というシンプルな目標は、達成感を得やすいものでもあるはずです。
冒頭にもお話した、
・有酸素運動で脳を活性化
・適度な負荷の運動で筋肉量を維持/代謝アップ
・日光を浴びて体内時計をリセット
といった健康効果も併せることで、認知症の困りごと=BPSDの軽減にも寄与できるかも…
そして何より、道具もお金も使わない!
意外と大事かも。
認知症ケアと散歩、なかなか効果がありそうな気がしてきませんか?
まとめ+α
というわけで今回は、「認知症ケアに散歩が有効!」という内容を、
「デフォルトモード・ネットワーク」という用語から解説しました。
介護施設の活動として、散歩やウォーキングを実施している場合も多いかと思います。
ゼヒ、「実は脳科学に裏付けされたエビデンスがある…」なんて考えながら提供してみてくださいね。
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